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あなたの写真は現像でもっと良くなる。


昔、お洋服屋さんに勤めていた友人がこんな事を言っていた。
「オシャレな服、もっとめちゃくちゃ安く売っちゃえばいいのに、
だって、そうしたらみんなオシャレな服着るでしょ、そしたらオシャレな人が増えるじゃん。絶対その方がいいよね」

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インターネットで、いろんな人がいろんな写真をアップしていて、もちろんみんなそれぞれに思いのある写真を撮っていて、いろんな良さがある。

ある場面、ある人が、わざわざカメラやiPhoneを取り出して、撮影して、アップしているからには
その人はきっとその場面に何かしらの思いを感じていたはずであり
それを代弁するのが写真の機能のうちの一つだ。

しかし、これはきっと誰しもが経験したことがあると思うが
例えば花がきれいだなと思って撮影したが、なんか違う、目の前の花は綺麗なのに写真に写る花は綺麗ではない。
花というのはまあ何でもいいので何となく思い当たるものを当てはめて考えてもらえばいい。

以前のエントリでも触れたとおり人間の視覚というのは単なる光学的な装置ではなく、
網膜で捕捉された絵は脳でありとあらゆる加工を経て、「それを見ている」と認識されている、いや、「錯覚している」と言ってもいいほどだ。

先の花の話で言うと、あなたは、鮮やかに、明瞭に加工され、同じような明るさと彩度で存在するはずの後ろの葉や雑草はまるで存在していないかのごとく淡い描写にされ
それをさも「事実を見ている」と思いながら脳が描きなおした「理想の花」を見ているに過ぎない。

じゃあ撮った花をどうすればいいのか、現像しよう。


花花ってうるさく言っておいて、作例は車である。


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まあこんな写真があったとする。rawそのままである。
とくに暗いボディカラーの自動車で顕著なのだが、思っている以上に車の周辺が明るく写ってしまう。
人は明るいところに目がいきがちなので、メイン被写体である車が埋没してしまう。
なのでこれをまずは修正する。


あなたの写真は現像でもっと良くなる。_e0372684_21540706.jpg
円形フィルタを、だいたい車の大きさにしてななめにしてくるまと合わせる。
ここではあまり神経質にならなくてよい。
そもそも、エッジはぼかされて処理されるし、このあと実際に仕上がりをみながら円形フィルタを自由に動かせる。


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大胆に露光量を下げる。
これだけで驚くほどナチュラルな印象になるはずだ。
どのくらい露光量を下げるかは、ケースバイケースとしかいいようがないが、
0.5段から1.5段の間くらいが多い。
この状態で円形フィルタを動かすと、露光量の下がる領域がリアルタイムで描写されるため、ここで微調整するとよい。
どちらかというと足元が暗く埋没してしまうケースがあるので、車全体をきれいに覆うというよりはすこし下にオフセットしてあげると良い。


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露光量の調整を下げすぎるとこのようになる。
野外だと明らかに不自然になるのでNGだが
屋内で撮影したものだと、疑似的にスポットライトのような効果になり思ったほどは不自然にならない。
写真によっていい塩梅にするとよい。


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写真全体の露出の調整だが、特にこのような晴天の下だと影が非常に強くでてしまい、線の太い描写になってしまいがちである。
そこで、シャドウをもちあげ、そのぶんコントラストをあげて全体を引き締めると過度に重くない、見栄えがいい絵になりやすい。


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芝生はいがいと黄色みがつよく、そのせいで写真全体が黄色っぽい印象だったため最初に作った円形フィルタの色温度を調整し
青みをつよくした。
全体の調整で色温度で絵の色合いを調整するのは影響が強すぎるのでお勧めしない。


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このように補正ブラシを用いて、おおざっぱに車の輪郭をなぞり、ヘッドライトなどもなぞっていく。
もし印象的なプレスラインやディテールがあれば、そこもなぞると良い。
これを・・・


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明瞭度をあげる。
すると輪郭が強調され、またヘッドライトもクッキリした。
プレスラインをなぞった場合には明暗差が強調され立体感が強くなる。


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ボディ側面の映り込みが非常にうるさいので
被写体の車に使われておらず、なおかつ映り込みがうるさい原因である赤色の彩度を落とす。
ぱっと見で青色っぽくても、実はマゼンダであったり、他の色に引っ張られて誤認することがあるので注意。
写真内をドラッグしてその領域の色要素を調整するのが一般的で私も普段はそうするが、
ボディ色の青色に引っ張られてうまくいかない気がしたのでここでは手動でオレンジ~マゼンダを適度に落とした。


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ヘッドライトがクッキリしているとかっこいいので小さい円形フィルタを作成しヘッドライトユニットの内側に収まるくらいにする。
円形フィルタ内側を補正するので「反転」にチェックを入れるのを忘れないようにすること。
「かすみの除去」を行いレンズをハッキリさせる。
かすみの除去をすると暗くなるので、そのぶんも補正しておく。
どのように補正するかは絵を見ながらのケースバイケースになるが、ここではハイライトを持ち上げるやりかたをしている。
素直に露光量をあげる事も多い。
「かすみの除去」はかなり強い影響を与える機能なので、やりすぎると不自然になってしまうため、
全体の印象を見ながら注意深く調整する。


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晴天の下で撮った色付きの車は非常に色飽和してベタっとした写りになってしまいやすいので、注意深く彩度を上げる。
今回は艶が深いブルーだったのでやや上げた。


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本来であれば現像の最初の最初にやるべきことを忘れていたのでここでやる。
レンズ補正と色収差の除去である。やって損することは多分ないので基本これはチェックしておけばいい。
特に建物と絡めて撮っているときにはレンズの歪曲収差が問題になるのでかならずチェックしておく。


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レンズ補正には「プロファイル」と「手動」のタブがあり
先ほどはプロファイルで自動的に補正させたが、さらに手動で補正することもできる。
手動で歪曲収差を補正することはあまりないと思うが、フリンジの軽減は非常に有用なので紹介する。
金属光沢など強い照度があると明るい領域のまわりに紫色のフチ取りができているのをみたことがあるとおもうが
このフリンジの軽減で一挙に消し去れる。

が、上の写真をみていただくとわかる通り、マゼンタに近いと思われたのか、ブルーのボディ色が一部欠けている。
このように、フリンジの軽減は意図せずもともと存在する色を侵食することがあるので注意。ので、


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ここではフリンジの軽減は使わないようにした。
左のトライデントなどはいかにもパープルフリンジが出そうなところだがよく抑えられている。


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ボンネットがあまりにも白く色あせていたので円形フィルタで調整。
上の写真のように青い領域で範囲マスクをかけて不要なところまで補正されるのを防ぐ。


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かすみの除去を使ってボンネットの青色を取り戻した。


今回はこのくらいで終わり、

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こんな感じになった。

最初に書いた通り、認識している世界と、写真に写る世界はあまりにも違う。
沢山の人の感動を、沢山の写真で共有させてほしいと思い、ブログを書いた。
少しでも参考になったという人がいれば嬉しいです。

おわり。



by rossodino | 2017-11-07 22:44 | 現像